リッカート法では各項目の素点和を
尺度得点として扱います。
その妥当性に関しては議論が
存在するところだと思うのですが,
今回はその得点の使用法に関する
指摘をしてみます。
心理尺度の中には
・・・尺度得点が
○点以上の人は〜型,
△点以下の人は〜型というように
類型化のために尺度得点を使用するものが
あります。
類型化すること自体に問題はないと思う
のですが,○点以上や△点以下という
基準を設けることについては疑問を挟む
余地がありそうです。
まず当たり前のことですが,
少なくともそのような基準を設定する際には
標準化の作業が必要でしょう。
少数のサンプルの結果を基に
基準を設定することには問題があるでしょう。
つまり,尺度作成の際にどのような母集団を
想定し,どのようなサンプルを用いたかに
関しては明示する必要があると思います。
また,選択肢にどのような評定尺度表現を
用いたのかも明示する必要があると思います。
今まで分析したデータをみていると,
どのような評定尺度表現を用いるかにより
尺度得点の平均点や分散が変わるようです。
そんなことは当然といわれるかもしれませんが,
案外意識されていないのではないでしょうか。
尺度作成の論文をみていると1つ1つの
尺度表現にまで言及しているものはかなり少なく,
多くの場合,
「“あてはまる”から“あてはまらない”の
5件法を用いた」という
記述がされているだけです。
このことは先述したような得点を基に類型化
をする場合には特に重要な情報になると
思います。
個人的な意見ですが,尺度作成の論文の場合は
この辺りまで明示しておいてくれると
後に使う人が迷う必要がなくなると思うのですが・・・。